はかせのコラム

ビスケットによるコンピュータ入門

ビスケットは誰でも簡単にコンピュータのプログラミングができるツールです。世の中にはプログラミングを教えるためのツールは沢山ありますが、ビスケットを設計した目標は、プログラミングの習得ではなく、遊びながらコンピュータとは何かということを、直観的に理解して行くことです。ビスケットを設計する上で心がけたのは、将来コンピュータの道に進まない人であっても、コンピュータのことを好きになって欲しい、ということでした。世の中にあるコンピュータ入門は、理系男子が好みそうなテイストのものが多いですが、もっと広く、女子にも受け入れてもらえるようなコンピュータにしたかった。

少し具体的に、ビスケットで遊んでコンピュータをどのように感じて欲しいのか解説しましょう。

1)「コンピュータは自分のもの」
ビスケットでは、自分の描いた絵が一番目立つようにデザインされています。楽しませるための過剰な演出もありません。ここがテレビゲームと全く違うところです。こちらが指令しなければ何も動きませんし、親切に動いてくれる訳ではなく、指令した通りにしか動きません。コンピュータに使われているのではなく、コンピュータを使っているのは自分なのだ、という気持ちを一番大切にしています。

2)「コンピュータの中身を触れる」
コンピュータはブラックボックスと思われがちですが、ビスケットはその逆で、直接中身を見せて触れるようにしています。触るとすぐに動き出しますから、いろんな実験がすぐにできます。自分で直接触っている感覚を大切にしたいので、自動的に整理してくれる機能はあえて用意しませんでした。その代わり適当に使うとすぐにぐちゃぐちゃになってしまい、作っている人の性格がよく現れます。

3)「小さな変化による指令」
コンピュータは一度に小さな変化しか起こせません。複雑な動きをさせたければ、コンピュータが理解できる小さな変化に分解して指令します。小さな変化は高速で動作するので、複雑な動きがあたかも一つの指令のように見えますが、実際は小さな指令の積み重ねです。ここがコンピュータの最も基本的な性質です。小さな変化はどれくらいの大きさで、組み合わせるとどうなるのか、こういった直観は理屈ではなかなか理解できません。遊びながら身につけるのが理想だと考えています。

4)「データとプログラムの多段階層」
コンピュータが高い可能性をもつ最大の理由は、データとプログラムが何重もの階層になって作られていることです。ある層は、下の階層から見るとデータに、上の階層から見るとプログラムに見えます。ビスケットで作ったオルゴールのプログラムでは、音符の部品を並べて好きな曲を演奏できます。部品の並びがプログラムに見えるわけです。一方、ビスケットより下の階層を見ると、ビスケットはプログラミングをするツールですが、ビスケットを作るためのツールが下にあって、そのツールを作るためのツールがまた下にあります。このようにビスケットの上にも下にも沢山の階層があります。階層を重ねて行くことで、コンピュータがどんどん賢い機械になって行きます。一番下のハードウェアはいろいろな制約を受けますが、そこより上のすべての階層は自由に考えることができるわけですから、すごい可能性が眠っています。

簡単にしか説明できませんでしたが、Webサイトにもう少し詳しい解説を載せています。興味のある方はぜひご覧になってください。
ビスケットの遊び方へ